2/08/2014

白いウサギ

うすぐもりの坂道を下っていると、一房の麦が生えていました。

それを手に取って歩き出した途端、後ろからウサギが麦に飛び付いて来ました。

私がそのウサギを抱きしめるや否や、私の体は上に向かって引き上げられ始めました。

風に吹かれるようにして、私とそして持ち重りのする大きなウサギは、瞬く間に上空に浮き上がって行きます。

どのような努力とも無関係に、私達は空に上って行きます。まるで天神のように。

しかしウサギが暴れ出しました。 麦を食べ切ってしまったのかもしれません。

落とさないようギュッとウサギを抱きしめようとするのですが、後ろ足で一蹴りすると、ウサギは私の手の中から飛び出てしまいました。

ウサギはドンドン落下して、見る間に小さくなり、そして地面に叩き付けられました。

でもまだ生きているようです。

 
私はどうしたら良いのでしょう?
とりあえず地面に戻りましょうか。 でもどうやって?

 
暫く風に流されていると、背の高い二階建ての家が見えてきました。

その家の屋根の上に降りましょう。

屋根の上に足を下ろして、一安心です。

でも屋根から地面に下りる方法がありません。

これではまるで切り立った崖の上に居るようです。

あ、でも光り取りの窓があります。 ここから家の中を覗いて見ましょう。

光り取りの窓を叩いて「空から降りて来たんです。助けて下さい。」と言いました。

その家のお母さんと子供達が窓の下に来てくれました。

それからその家のお父さんが高い脚立を持ってきて、窓の下に置き、それを上って、窓を開けてくれました。

慎重に窓を通って、ユックリと脚立を下って、暖かい部屋の中に迎え入れられました。

私は恥かしくて、サヨナラを言って直ぐその家を出ました。

しかし私は靴を履いていません。

困っていると、庭先に運動靴が落ちていました。以前私が履いていた靴と良く似ているけれど、靴底の色が少し違います。

「これが私の靴です」と言って土の上からそれを拾い上げて履き、私はまた歩き始めました。

 

 

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