10/17/2012

敵の幻想 1 ツッパリ中学生


敵の幻想(1)  あるいはツッパリ中学生に関して
 

私は日本の中学校に一年間だけ通いました。

中学一年生を卒業した後、家族の関係で再度アメリカへ渡ったので、中学校の同級生達とその後会ったことは今まで一回もありません。

ここ数週間はその頃のことを思い出していました。

 

秋の在る土曜日の昼、教室でウロウロしていると、クラスで一番背が高くて学級委員で生徒会員だったH君が笑顔を浮かべながらこう言いました。

H「岡上、お前は良いカッコばかりして、カッコつけぇ!」

岡「あんだ~お前! ふざけんじゃねー!! 先公のお気に入りはオメーだろう! ざけんなよ!! ぶっ殺すぞー!」 

H「お前はカッコばかりで。 良い子ちゃんだよな!」

{何が言いたいんだコイツは? オレは一生懸命ツッパているのに、何が「良い子ちゃん」なのだろう。}

岡「お前、ぶ殺すぞ!! 良い子ちゃんはお前だろう! 先公の犬め。」

{!怒! 殴っちゃおうか? でもH君は体が大きいから、もしかしたら負けるかも? 勝ったら勝ったで、先生に言い付けられてかなり面倒なことに成りそう。}

 

結局お互いに一発も殴り合うこと無く、私はそのまま家に帰りました。

日曜は勿論お休みで、月曜の朝登校すると学校全体の雰囲気が何かヘンなのです。

全体的にザワザワして、そしていつまで経っても先生が教室に現れず、第一時間目も始らないのです。

その内「生徒の誰かが死んだらしい」という噂が他のクラスから聞えてきました。

「全生徒は校庭に集まってください」というメッセージが放送で流れたので、心細く校庭に出て校長先生の話を聞きました。

「一年6組のH君が昨夜急病でお亡くなりに成りました。黙祷しましょう。」

{あのー、ズルイんですけど。}

 

あの時H君は私に何を言おうとしていたのでしょうか? 

彼が言いたかったのは「お前が気に入らない!」それだけだったのでしょうか?

訊ねる機会を逃してしまいました。

彼は私よりも背が高くて、明るくて人気が在って、社交的で、先生達とも仲が良くて、女子生徒達とも仲良く話していて、成績もかなり良かった筈です。 今から考えれば私にとって彼は欠点が思い浮かばない男の子でした。 

 

でも、もう一つのエピソードを思い出しました。

実はその数ヶ月前、全く同じような状況で私は別の同級生を今度は本当に殴っているのです。

その時のお相手はK君でした。 K君は寡黙でドッシリした固太りの男の子で、私には彼が土建屋の親父か、ヤクザの親分のように見えていました。

私はK君から真顔で「お前はカッコだけだ!オレと喧嘩してみろ!」と挑発されて、その時は彼のお腹を殴っていました。

力を込めておもいっきり殴ったのにK君は全く平然としていました。

「マズイ!  俺の方が弱いのかも!!」

殴り返されたり組み敷かれるのは嫌だからその後巧妙に逃げました。 ちなみにK君はその後も元気でした。  

{いなかっぺ大将のツッパリ中学生版だね、どうも。 あ、だけど後でK君と仲直りしたりとかは全然しませんでした。 なのに何でK君から仕返しされなかったんだろう? やろうと思えば幾らでも出来たはず。} 

 

正直に言って私はH君に対して感じた羨望のような気持ちをK君に対しては持っていませんでした。 もしかしたら、だから私はK君を簡単に殴ってしまい、H君は殴れなかったのかもしれません。{本当にそうなのかなー? この考えにはあまり納得出来ません。H君を殴れなかったのは、その時彼が笑っていたから、それと彼が担任の先生にとても気に入られているように見えたからだと思っていたのだけれど。}

 

「死んでしまうなら何故生まれてくるのか?」

私は今でも自分の母親に向かって時々この質問をしています。

{どうにも酷い奴だねオレは。}

この質問をする資格が私には無いのかも知れません。少なくとも、私はいまだに適切な言葉で言いたいことが言い表せないでいる様です。

でもH君のことを思い出すと、この質問にも意味があると思います。

その答えはACIMの最後の章に書いてあるそうです。

 

と、ここまで書いてこの文章は暫く放って置きました。

あまりスカッとした話ではなく{というかこの文章だとオレがカッコ悪過ぎてあんまりだわ!}、これが本当にACIM と関係があるのか解らなかったから。

でもChapter 31-2を見直している時に、この話がヒントになって、今まで意味が通らなかった部分が明瞭に成りました。

そしてH君とK君のこの話が毎日何度も私の中で繰り返され続けているのです。

やはり書いて出さない訳には行かないようです。

続く {Chapter31-2は、一旦削除し、直ぐに書き直して再アップします。}