それを手に取って歩き出した途端、後ろからウサギが麦に飛び付いて来ました。
私がそのウサギを抱きしめるや否や、私の体は上に向かって引き上げられ始めました。
風に吹かれるようにして、私とそして持ち重りのする大きなウサギは、瞬く間に上空に浮き上がって行きます。
どのような努力とも無関係に、私達は空に上って行きます。まるで天神のように。
しかしウサギが暴れ出しました。 麦を食べ切ってしまったのかもしれません。
落とさないようギュッとウサギを抱きしめようとするのですが、後ろ足で一蹴りすると、ウサギは私の手の中から飛び出てしまいました。
ウサギはドンドン落下して、見る間に小さくなり、そして地面に叩き付けられました。
でもまだ生きているようです。
とりあえず地面に戻りましょうか。 でもどうやって?
その家の屋根の上に降りましょう。
屋根の上に足を下ろして、一安心です。
でも屋根から地面に下りる方法がありません。
これではまるで切り立った崖の上に居るようです。
あ、でも光り取りの窓があります。 ここから家の中を覗いて見ましょう。
光り取りの窓を叩いて「空から降りて来たんです。助けて下さい。」と言いました。
その家のお母さんと子供達が窓の下に来てくれました。
それからその家のお父さんが高い脚立を持ってきて、窓の下に置き、それを上って、窓を開けてくれました。
慎重に窓を通って、ユックリと脚立を下って、暖かい部屋の中に迎え入れられました。
私は恥かしくて、サヨナラを言って直ぐその家を出ました。
しかし私は靴を履いていません。
困っていると、庭先に運動靴が落ちていました。以前私が履いていた靴と良く似ているけれど、靴底の色が少し違います。
「これが私の靴です」と言って土の上からそれを拾い上げて履き、私はまた歩き始めました。